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JanJan(2008年2月10日 付)

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 欧州委員会は、世界的な飢えを引き起こすのではないかとの懸念をよそに、バイオ燃料使用増加の目標を維持する決定を下した。

 1月23日に公開された気候変動と闘う将来的な行動計画の中で、EUの執行機関である欧州委員会は、以前に合意した2020年までに自動車その他の輸送モードに必要なエネルギーの10パーセントをバイオ燃料とする目標を維持すると発表した。

 この発表は、目標に対する非難集中にも拘わらず行われたもので、批判の声は欧州委員会の内部からも上がっている。開発支援担当のルイ・ミチェル・コミッショナーは今月初め、「先進国のエネルギー確保のために農耕地にバイオ燃料作物を植えると、途上国の伝統的農業に大きなリスクを与えることになる」と語った。

 また、欧州委員会の科学者達も、10パーセントのバイオ燃料使用で温室ガス効果を抑えることができるかどうかは疑問とする調査書を提出している。

 これに対しアンドリス・ピエバルクス・エネルギー担当コミッショナーは、「EUで使用されるバイオ燃料には、生態学的/社会的持続可能性を確保するための基準が適用される」「多様な動植物が生息している場所で生産された作物は燃料製造に使ってはならず、森林あるいは多量の炭素を含む土地でバイオ作物を栽培してはならない」と言う。

 これは、湿地あるいは泥炭地帯でのバイオ燃料生産は、気候変動を引き起こす主要ガスである二酸化炭素の大量放出に繋がるとの報告に従ったものである。

 ピエバルクス氏はまた、EUのバイオ政策で食料品の価格高騰が起こらないよう"保証する"として、「EUの政策により日用品が値上がりしたことが明らかになれば、断固とした措置を取る」と述べた。

 しかし、これらの約束も貧困緩和や環境保全に関わる活動家の危機感を払しょくすることはできなかった。

 オックスファムのスポークスマン、アレクサンダー・ウールコム氏は、「バイオ燃料は途上国の一部農家の収入増に繋がるかもしれないが、これが食糧生産に害をもたらしてはならない」と語っている。

 米農家が大豆をバイオ燃料に転用した方が利益になると判断したため大豆価格は記録的な価格高騰となり、インドネシアでは先週抗議の街頭デモが行われた。

 ウールコム氏はIPSに対し、「EUは非常に大胆な目標を掲げたが、実現のための方法は分かっていない。持続可能な方法による目標達成ができないのであれば、白紙に戻すべきだ」と語った。

 南アメリカの活動家は、「欧州委員会は、ヨーロッパの主要バイオ燃料材料であるヤシを栽培するため途上国の農家が土地を追われている現実から目をそらしている」と批判する。

 「アルゼンチンの地方を考える会」(Groupo de Reflexion Rural in Argentina)のステラ・セミノ氏は、「欧州委員会が提案した持続可能の基準には、大規模な水抽出、土地浸食、土地紛争、人権、労働問題といった要素が欠落している。更に、強制立ち退き、食糧価格高騰といったマクロ・レベルの影響に関する考慮もなされていない」と批判している。

 グリーンピースのフローケ・テイス氏は、作物問題は、燃料効率の悪い車への燃料提供ではなく電力・熱生産の観点から検討できるのではないかと述べ、10パーセント目標は"間違い"と主張する。

 欧州委員会計画の画期的な点は、風力、太陽といったクリーンで持続可能な資源からの電力生産量を増大するため、欧州委員会加盟27カ国それぞれに法的強制力を伴う目標設定を提案している点である。これは、2020年までにEUの温室ガス排出の20パーセント削減実現を目的とする。

 欧州委員会はまた、主要エネルギー消費国が排出する二酸化炭素量の上限を定めることを目的に3年前に設定された排出量取引制度(ETS)の規模拡大を提案している。

 大手電力会社の一部は、ETS割り当て免除により利益を得てきたが、2013年からは新たな計画に従い電力セクターの排出許可はすべて競売にかけられることとなった。しかし、他国が同様の気候変動対策を行っていないことから、国際競争力が弱いと思われる経済活動については競売からの除外を認める模様。

 欧州委員会のジョゼ・バローゾ委員長は、新計画実施コストはEUの国内総生産の0.5パーセントまたはEU市民1人当たり1週間のコストは、現在から2020年まで、約3ユーロ(4ドル)になると予測した。同措置を採用しない場合のコストは10倍になるという。同氏はまた、再生可能エネルギーの使用拡大は、独裁国あるいは政治紛争国から輸入する石油/天然ガスへの依存度軽減という大きなメリットがあると述べている。

 欧州議会メンバー(MEPs)は、新計画に概ね賛成している。

 同議会リベラル派のリーダー、グラハム・ワトソン氏は、同計画は、2004年に委員長に就任したバローゾ委員長がとった最も重要な行動であると語っている。(原文へ

翻訳=山口ひろみ(Diplomatt)/IPS Japan 山口響

コメント:

かなり偏った論調ですが、科学者の潮流としてはバイオ燃料に対する風当たりは強くなる方向に動きそうです

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東京新聞(2008年2月 9日 付)

記事:

トウモロコシなどの穀物からバイオ燃料をつくるために森林や草地を切り開いて畑にすると、温室効果ガスの排出量が数十年から数百年にわたって増えて地球温暖化を促進するとの研究結果を、米国の二つの研究チームが八日までに米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。

二酸化炭素(CO2)の排出削減につながるとして、世界中で温暖化対策の有力な柱に据えられるバイオ燃料だが、米ワシントン・ポスト紙によると、十人の科学者グループがこれらの研究結果をもとに、ブッシュ大統領や議会幹部に政策の見直しを求める書簡を提出した。

両チームとも、土地の新規開拓で焼き払われる樹木や、耕される土壌から長期間にわたって放出されるCO2を勘案したバイオ燃料と、同量の化石燃料とで、排出されるCO2量を比較した。

プリンストン大のチームによると、トウモロコシを原料にしたエタノールの場合、三十年間はバイオ燃料の方がガソリンより二倍近くのCO2を放出。ガソリンの排出量を上回るのは百六十七年間も続くことが分かった。土地を新規開拓せずに生産したエタノールを使えば、20%の削減になった。

また、ミネソタ大などのチームによると、インドネシアの泥炭地の森林をディーゼル燃料向けのアブラヤシ畑にすると四百二十三年間、ブラジルの熱帯雨林をディーゼル燃料用の大豆畑にすると三百十九年間、それぞれバイオ燃料の方が化石燃料よりも排出量が多いとの結果が出た。

コメント:

167年後の世界は大きく変わっているはずですので、論文が正しいとすれば、バイオ燃料はCo2による地球温暖化防止には貢献しないということですね