理系系ニュースで「中国」と一致するもの

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徳島新聞Web(2008年2月12日 付)

記事:

米司法省は11日、スペースシャトルなど航空宇宙開発に関連する機密を中国に渡す目的で盗んだスパイ行為の疑いで、米航空機大手ボーイングの元技術者(72)を逮捕したと発表した。

 逮捕されたのはカリフォルニア州在住の中国系米国人で、1973年から防衛・宇宙関連会社に勤務。この会社が96年にボーイングに買収された後は同社で働き、2003−06年には同社の請負業者として働いていた。

 司法省によると、元技術者はシャトルやC17輸送機、デルタ4ロケットに関する機密を中国に譲り渡すため取得したり、隠すなどしていた疑い。

 これとは別に、司法省は政府の機密書類を中国側に渡したスパイ行為の疑いで、国防総省の職員ら計3人をこの日逮捕した。

コメント:

国際的な技術スパイはまだまだなくなりそうにないですね。


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日本の論点PLUS(2008年2月 8日 付)

記事:

 大学受験シーズンの真っ最中である。これから国公立大学の2次試験と私立大学の一般入試がはじまるが、「厳しい受験戦争」という言葉はいっこうに聞こえてこない。"大学全入"の時代をむかえ、大学や学部さえ選ばなければ、誰でも大学に進学できるようになったからだ。すでに大学入学者の42.6%が一般入試を受けず、推薦入学や一芸入試などのAO(アドミッション・オフィス=入学試験事務局)入試で入学している。いまや大学がらみの競争といえば、もっぱら生き残りを賭けた大学間の"サバイバル戦"を指すようになったのである。

 受験戦争が影をひそめたことに加え、授業時間を大幅に削減した"ゆとり教育"の実施によって、日本の生徒は勉強をしなくなった。そのため、生徒の学力は著しく低下した。OECDの「生徒の学習到達度調査」(PISA)によれば、2000年調査では数学的な能力を計る「数学的リテラシー」が世界第1位だったが、03年は6位に、06年は10位に転落し、教育関係者に衝撃を与えた。さらに「総合読解力」は、この6年間で8位から15位に、「科学的リテラシー」は2位から6位に落ちるなど、全分野で順位を下げる結果を招いてしまったのである。

 学力の低下は、何をもたらすのか。英国「The Times」誌の別冊「THES」が07年11月に発表した『世界大学ランキング2007』によれば、日本の大学はベスト10に1校もランクされていない。1位のハーバード大学、2位のケンブリッジ大学など、10位までに米英の名門校がずらりと並ぶ。日本の大学で100位以内に留まっているのは、17位の東京大学、25位の京都大学、46位の大阪大学、90位の東京工業大学といった国立の4校にすぎない。200位以内の大学は、私立の慶応義塾大学(161位)と早稲田大学(180位)の2校を含め、わずか11校だった。このTHESランキングは04年に開始された。東大は、初回調査で14位だったが、その後3年連続で順位を下げた。06年にはアジアトップの座を14位の北京大学に明け渡し、19位にまで転落したのである。

THESランキングでは世界の大学を、研究力(研究者の評価40%、教員一人当たり論文引用数20%)、就職力(雇用者側の評価10%)、国際性(外国人教員比率5%、外国人学生比率5%)、教育力(教員数と学生数の比率20%)という観点から評価している。研究力に重点が置かれていることから、英語で論文を発表する国の大学が高く評価される傾向がある。アジアの大学には不利な面があるのだが、中国の上海交通大学が調査する『世界のトップ500大学』の調査でも、ベスト100のほとんどを米国の大学が占める結果となった。評価の基準は、ノーベル賞などを受賞した卒業生と教員数、「ネイチャー」「サイエンス」誌などへの掲載論文数、論文の被引用数などである。07年のトップ100をみると、20位の東大、22位の京大、67位の阪大など、日本の大学では国立大が6校しか入っていない。

日本の研究業績は、世界に遅れをとってきたわけではない。論文の占有率では、長らく米国に次いで2位を維持してきた。だが、論文がどれだけ引用されているかを表す「相対被引用比率」(被引用数の占有率を論文数の占有率で割ったもの)になると、米国、英国、ドイツ、フランスに次ぐ5位にすぎない。しかも中国とロシアが、猛烈な勢いで日本に迫っている。日本の研究者数も、すでに中国に抜かれ世界3位になった。中国では、膨大な科学技術予算を投じ、飛び級制度によるエリート教育を実施している。日本の大学が中国の大学に追い越されるのは、まさに時間の問題といえるだろう。

少子化が進むなかで、日本の各大学は研究機関の充実よりも、学生集めに躍起になっている。今後は、"大学全入"と"ゆとり教育"の影響が顕在化し、大学の国際競争力をさらに低下させるのはまちがいないだろう。

コメント:

日本の大学の低下は予想以上に起こっているのですね。同時に国内での格差も増しそうです。


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科学新聞社(2008年1月 7日 付)

記事:

総務省統計局は12月11日、平成19年度科学技術研究調査結果の速報値を公表した。科学技術調査は、総務相統計局が毎年行っているもので、日本の科学技術に関する研究活動の状態を調査し、科学技術振興に必要な基礎資料を得るのが目的。

平成18年度の日本の科学技術研究費の総額は、18兆4631億円(対前年度比3.5%増)と過去最高で、7年連続の増加となった。また、対GDP比率も3.62%と過去最高となった。これは全体の8割を占める民間企業の研究開発投資が4.6%伸びているためで、大学等は0.7%のマイナスとなっている。性格別に見てみると、基礎研究費(2兆3756億円)、応用研究費(3兆7877億円)はともに0.9%の伸びだが、開発研究費(10兆9294億円)が5.5%と大きく伸びている。

産業別では、企業の研究所などが23.7%増と大きく研究費を増やし、次いで医薬品工業12%増、輸送用機械工業5.3%増などとなっている。

一方で大学の研究費を見てみると、国立大学が4.2%減の1兆4277億円、公立大学4.5%減の1765億円となっている中、私立大学は2.7%増の1兆7782億円となっている。学問分野別では、自然科学系が1.2%の減となっているが、特に理学は10.4%の減と大きく下がっている。

また、研究関係従業者数は105万2100人で、前年に比べて1.5%増えた。研究者が82万6600人(0.8%増)、研究事務その他の関係者が8万3200人(5.3%増)、研究補助者が7万3900人(3%増)、技能者が6万8400人(4.5%増)となっている。男女別に見ると、女性が10万8500人と全体の12.4%を占め、過去最高となった。

技術貿易動向を見てみると、平成18年度の技術輸出による受取額は17.8%増の2兆3782億円と過去最高になった。また、技術輸入による支払額は7054億円(0.2%増)と過去最高。技術輸出額を技術輸入額で割った技術貿易収支比率も3.37倍と過去最高となった。

技術輸出の相手国としては、米国(40%)を筆頭に、中国(8.9%)、タイ(7.9%)、イギリス(5.3%)、カナダ(4.6%)と続いている。一方、技術輸入の相手国としては、米国が73%と圧倒的に大きく、フランス、ドイツ、イギリス、スウェーデンなど米国以外の各国は数%程度となっている。(科学、12月21号2面)

コメント:

GDP比で最高となったのですね。理由を知りたいです


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東京新聞(2008年1月 3日 付)

記事:

初日の出とともに、京都議定書の約束期間が始まって、地球環境は大きな転機を迎えています。政府はもちろん、企業や市民も、自らを変える転機にしたい年。

インドネシアのバリ島で先月開かれた国連気候変動枠組み条約第十三回締約国会議(COP13)。国際NGO(非政府組織)の会合に研究者として参加した名古屋大学大学院教授の竹内恒夫さんは「日本は変わってないな」と、ため息をつきました。

京都議定書で温室効果ガス削減の基準年とされる一九九〇年、竹内さんは環境庁の職員でした。

同じ目標、同じ議論
そのころすでに欧州では、地球温暖化問題が重大視されていて、温暖化対策の「二〇〇〇年目標」をつくるのが、流行になっていました。

オランダで前年に開かれた温暖化と大気汚染対策の国際会議に出席し、欧州の空気に触れた上司の発案で、その年創設されたばかりの地球環境部が、「日本版二〇〇〇年目標」をつくることになりました。

資源エネルギー庁に出向した経験のある竹内さんは、主に省エネを進める視点から、そのチームに招かれました。

竹内さんたちがつくった「地球温暖化防止行動計画」は、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない都市構造やエネルギー受給環境、ライフスタイルなどへの転換を図ることにより、二〇〇〇年の温室効果ガス排出量を九〇年と同じレベルにするという目標を掲げています。

二〇〇〇年から九年目。京都議定書で日本は、CO2の排出量を五年間で6%減らす約束だ。ところが、九〇年比でいまだにゼロにはなっていない。それどころか、6・4%も増えている-。

「電力会社もガス会社も、私たち一人一人も、いいかげん変わらないかん」と、竹内さんは考えました。

世界は動き始めています。

米国は変われるか
バリ会議では、温室効果ガス削減の数値目標など、具体的な課題はほとんど先送りにされました。

それでも「バリ」の名は、地球環境史の上に、「キョウト」と並んで深く刻まれることになるはずです。

"ポスト京都議定書"の交渉に、米国を呼び戻した成果もさることながら、世界の温暖化対策が転換点を迎えた記念すべき場所として。

「ギアチェンジ。潮目は変わり始めています」

地球環境戦略研究機関気候政策プロジェクトのシニアエキスパート、水野勇史さんの感想です。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第四次報告書で展開した人類の危機的未来図に、政治が反応し始めたのかもしれません。

途上国グループはこれまでずっと、「削減義務は一切拒否」の姿勢を崩しませんでした。

ところがバリでは一部の国が、「途上国も行動する」という意思を初めて表明しています。

中国も、サイドイベント(関連行事)で政府に近い要人が「二〇三〇年より前に排出量のピークを設定し、そこから減らす」と明言するなど、交渉の表舞台とは裏腹の変化の兆しを見せています。

温暖化への警鐘を鳴らし続けてノーベル平和賞を受賞した米国のアル・ゴア前副大統領は、議場での特別講演で「国民が正しく判断すれば、米国も変わるチャンスはある」と訴えて、喝采(かっさい)を浴びました。

米国内では、気候安全保障法案が上院委員会を通過しました。二〇年に〇五年比で19%削減し、政府主導で排出権取引制度を創設するという野心的な内容です。

州レベルでは、東部のニュージャージー州が、五〇年に〇六年比で80%の削減を義務づけるなど、"削減競争"の様相です。

ポーランドでCOP14が開催される十二月には、次の大統領が決まっていて、その人は、京都議定書を離脱したブッシュさんではありません。民主党候補が当選すれば、議論の流れも、"ポスト京都議定書"に至る「バリ・ロードマップ(行程表)」の道筋も、一気に変わってしまうでしょう。

温暖化だけでなく、地球環境問題が転機の年を迎えています。

変わり始めた政治や政府をさらに動かす"風"になるのが、私たち一人一人の行動です。地域の小さな変革です。私たちも変わらなければなりません。

「チーム・マイナス80」に
竹内さんは、脱化石燃料、脱自動車型社会への転換により、名古屋のCO2排出量を60%減らせるという自らの試算に基づいて、昨年六月、学生と「チーム・マイナス60」を結成し、企業、行政、市民への提言を始めたところ。

バリから帰国後、竹内さんはその看板を「チーム・マイナス80」に書き換えました。

「それくらいやらんと、いかんでしょう」

ことしこそすべてが変わり、持続可能な新しい時代がひらけることを願いつつ。

コメント:

温室効果ガスが出るようになったのも科学技術の進展によるものだし、逆に温室効果ガスを出さないようにできるのもまた科学技術なのです


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中日新聞(2008年1月 3日 付)

記事:

自民党は、経済成長につながる科学技術分野の研究・開発力を強化しようと、理数教育の強化や優秀な研究者の育成・確保に向けた「研究開発強化法案」(仮称)の検討に入った。中国などアジア諸国が国家戦略として科学技術力の強化を図っていることへの危機感があり、次期通常国会での成立を図りたい考えだ。

中心となっているのは、党科学技術創造立国推進調査会(船田元会長)。これまでの議論では、中国、韓国の研究開発費が2000年以降の約5年間で倍増されていることや、対抗して米国が科学技術投資の強化などを内容とした「競争力強化法」を制定するなど、各国の「科学技術強国化」の実情が報告された。

一方、国内では08年度予算案で科学技術振興費が1・1%増額されたが、財政状況を反映して依然、厳しい状況が続いており、関係者の間では「競争力が下がれば国力低下につながる」と懸念が広がっている。

コメント:

中国と韓国の研究開発費が過去5年で倍増とは驚きです。「科学技術基本法」もなかなか制定されないですし、是非実現して欲しいものです


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中国情報局(2008年1月 2日 付)

記事:

日本企業が中国の人材を様々な形態で活用し始めていることは前回お伝えしたが、大手の自動車メーカーも、仲介会社等を通して大連理工大学など中国の理工系大学からソフトウェア開発の技術を持つ中国人を採用している。日本では理工系の学生や自動車関連の技術者が非常に少なくなっていることと、中国の技術者のレベルが向上していることが背景にある。

それでは、技術があれば日本への留学経験や語学力は問わないのだろうか。この点が悩ましいところだが、日系企業の方に聞くと、技術の場合は、特に日本語が話せるということが重要だという。それは、日本語で仕様書を理解できて日本語で打ち合わせできないと、日本にいる技術者とのコミュニケーションが取れないためだ。英語が堪能、或いは中国語が話せる日本の技術者は非常に少ないため、中国人技術者を活用しようとすると、日本語ができないと仕事が進まないのである。そのため、来日前に日本語研修を受けたり、日本に来てからも日本語研修等に時間を費やしているケースが多い。しかし、グローバル化が進むなか、日本企業が根本的に抱えているこうした言語面での問題は大きなネックになる。英語が話せる技術者を増やすための具体的な措置が求められる。

一方、就職する側としては、日本への留学生はこれまでは希少価値があったが、優秀な中国の大卒との競争が激化しているため、今後は留学したというだけではなく、専門知識・経験等も持っていないと、差別化が図れないだろう。日本に留学したというだけでプレミアムがついた時代は終わったのである。それでも、留学生には日本の文化や社会の背景が分かるという意味での付加価値があるため、採用する企業としては、優秀な留学生を採用して本社でコア人材として育成することが中長期的に重要な戦略となる。

ソニーが中国で実施している直接採用の場合、現地で採用した後は日本語を教育して、日本において、まさに日本人社員の隣で働くことになる。日本語研修は来日前に3カ月間現地の日本語専門学校で行い、来日後も企業内でフォローアップする体制をとっているという。

このように、日本人技術者にとっても国境のないグローバルな人材競争が現実になってきている。中国人の立場から見ると、日本から中国へ戻って就職する場合は、技術系の業務だけでなく、他の職種でも現地人材との競争になる。これらを踏まえて日本企業が留学生に望むのは、まず日本語が仕事で使えることである。留学生を本社で採用するとしても、大半の企業は将来的に中国に派遣することを考えている。その場合、日本の技術者や管理者と電話一本で日本語で相談できる環境を作りたい。それができればそのブリッジ人材を軸に現地化を進めることが可能になる。そのためブリッジになる人材には、当然、高い日本語力が必要になる。

次に、分野に応じて、生産技術、知財、広報、人事、マーケティング・ブランディング、営業などの専門性を身につけていることが重要になる。新卒では経験がないために難しい面もあるが、こうした専門性を意識して大学生活を送ることは大事である。もう一つは、日本の企業文化をきちんと理解し、ある程度長期的な視野で考えられる人物かということだ。日本語ができて非常に優秀な人でも日本の企業文化に馴染まないケースも多いため、企業側としても、採用面接の際には自社のビジョンや理念をきちんと伝え、応募者の考え方や自社への適性度合いを見ておく必要があるだろう。入社してからミスマッチが明らかになっても遅いのである。

コメント:

以前、僕が働いていた会社で中国人(中国ではかなり優秀な大学)を採用しましたが、結局教育がうまく出来ず、彼の能力も十分発揮できず。。。という記憶があります


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Sankei Web(2007年7月17日 付)

記事:

中国の大学界で最高峰の北京大学数学科学学院。17歳の1年生、甘文穎が国際数学オリンピック(IMO)大会で金メダルを獲得したのは昨年7月の大会だ。

「金メダルはほとんど中国からの参加者が取っている。取れなきゃメンツがないよ」。甘の自信は、国家のシステムで特訓を重ねてきたことに裏打ちされていた。金メダルへの道は湖北省・武漢の公立高校で始まった。父親は県政府職員。甘は小学生時代、「勉強は嫌いでも数学はできた。ほとんど満点に近かった」。父親は才能を見抜いた。数学オリンピックの新聞記事を読み、甘を湖北省で「数学ナンバーワン」と呼ばれる「武鋼3中」(高校)に入学させる。

中国では10月に約16万人の高校生が全国高中数学大会(試験)に参加する。国立の中国数学会は上位約150人を選抜した上、翌年1月の中国数学オリンピック(CMO)テストに参加させる。その大部分は大学に無試験入学できる資格を得るほどの英才だ。

1週間の「数学キャンプ」で25人に絞られ、4月には特訓班「国家集訓隊」へ。ここで2週間に6回のテストを重ね、IMOへのメンバー6人が最終的に決まる。代表6人は97年以降のほとんどのIMO大会で、4人以上が金メダルという驚くべき成績を残し、国別総合得点順位もほぼ連覇している。90年から参加の日本は過去10年間、昨年の7位が最高だ。

北京数学学校の趙●(●=木へんに貞)名誉校長は「数学は科学技術だけでなく、人類や文化に及ぼす影響も大きい。数学の人材が広がることで中国の発展に希望が持てる」と強調する。

確かに、徹底した中国の数学エリート教育は、理科系人材の創出につながっている。中国は理科系人材を育成することで、世界の科学技術をリードしたいと考えている。特に力を入れている分野の一つが、ソフトウエアだ。日欧米の大学や企業に大量の人材を出して勉強させているほか、中国に海外の有名大学や大手企業の研究所を誘致して、技術獲得と技能アップに余念がない。

甘も将来、米マサチューセッツ工科大で博士課程に進みたいとのビジョンを描く。一方、日本では若い世代の理科離れが深刻さを増している。(野口東秀)


ソフト開発まで外注

20年前なら、日本の数学者は国際数学オリンピック(IMO)をほとんど気にもしなかった。短時間のうちに器用に問題を解いていく技術を、真の数学の能力と取り違えると、本物の数学者を育てるためにはかえって有害であるからだ。

だが、今の日本では状況が変わった。「数学への関心を増すという観点から、IMOは有益と言わざるを得ないのではないでしょうか」北京大学や上海・復旦大学を訪れた経験を持つ北海道大学大学院准教授で数学者の本多尚文は、そう語る。数学そのものを構築していく本格的な最先端の研究分野で比べると、日本の数学は中国の数学の水準を上回る。しかし、日本の高校生たちの数学への意欲は薄らぐ一方である。

日本の数学者から見ると、中国の数学は実用重視に偏りがちだ。「学生の間では公式集の丸暗記に力が注がれ、その意味を考えることは二の次です。数学に対する文化がまったく異なっている」と本多は語る。「でも中国の学生たちは非常にハングリーでエネルギッシュです」中国の大学では、収入増と結びつきやすい理系の人気が高い。


中国が重視しているのがソフトウエア開発だ。欧米も10年以上前から、注目している。米IBMは1995年に中国研究センターを設立。2002年7月には、北京大学や精華大学などの主要6大学の優秀な学生に対して「天才孵化(ふか)計画」(Extreme Blue)をスタートさせた。学生を選抜しての英才教育だ。IT人材育成を目的とした中国各地のソフトウエア学院に資金を提供して関係強化を図っている。

これに対し、日本の若い人たちの理科離れは著しい。慢性的にIT人材が不足するとともに、大学での工学部人気が大きく落ち込んでいる。目的意識を持った学生が集まらない。1995年に約57万人いた志願者が2005年には約33万人に減っている。就職でもIT業界への人気が低下している。今の日本の若い世代には「新3K」として敬遠されるのだ。きつい・厳しい・帰れない-のKである。結婚できないのKとされることもある。

その結果、日本の企業は、インドや中国などの企業へソフト開発委託を加速させている。このままでは日本の自動車や家電製品を支えるソフトウエアの多くが中国やインドで開発されかねない。

現在、日本のソフトウエアの輸出入状況は、圧倒的に輸入超過で、輸出1に輸入10の比率だ。 当初は、安い労働力を武器にプログラミングの請負だけだったが、日本のIT人材の不足から、徐々にソフトの設計部分の開発をも発注することになり、中国にその工程をこなせる人材が多くなっている。

現代は自動車、家電、飛行機などにとどまらず、企業の財務・生産管理に至るまでコンピューターソフトによって制御されるシステム社会だ。IT産業がグローバル競争の要である限り、IT人材の育成が国際競争力の鍵を握る。

NTTデータの山下徹社長は「日本は技術立国をめざしてきたのに、それさえ危うくなっている。海外へのアウトソーシング(外注)によって技術だけでなく、これからの産業の根幹となる重要なソフトウエア開発を外国に委ねてしまう」と警鐘を鳴らす。そこに日本の真の脅威が内包されている。

コメント:

記事通りとしたら、国家として危機意識をもたないとだめですね。


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