理系系ニュースで「マウス」と一致するもの

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神戸新聞(2008年2月15日 付)

記事:

 さまざまな組織に成長できる万能細胞の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、マウスの肝臓と胃粘膜の細胞からつくることに京都大の山中伸弥教授らが成功し、14日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。

 iPS細胞の作製には、発がん性が否定できない特殊なウイルスを使うが、肝臓や胃からできたiPS細胞は、皮膚由来のiPS細胞よりがん化の危険が低いことが判明。細胞の種類や手法の工夫によってこのウイルスを使わない道も可能になりそうで、山中教授は「臨床応用に向けて前進した」と話している。

 山中教授らは、これまで人やマウスの皮膚から作製に成功。今回は肝臓や胃粘膜の細胞に4種類の遺伝子をウイルスで組み込み、iPS細胞をつくった。

 これらは皮膚由来のiPS細胞と比べると、ウイルスが細胞の染色体に入り込む個所が少なかった。またiPS細胞をマウスの受精卵に混ぜて成長させる実験で、皮膚由来のものは約4割に腫瘍ができたが、肝臓と胃のiPS細胞ではほとんどできなかった。

コメント:

ますますiPS細胞の実用化が近づいていますね


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AFP BB News(2008年2月 5日 付)

記事:

遺伝子操作により風邪を引きやすいマウスの作製に成功したと、ロンドン大学インペリアル・カレッジ(Imperial College in London)の研究チームが4日の英医学誌ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)に発表した。せき、くしゃみ、ぜんそくなどの治療法開発への活用が期待される。

セバスチャン・ジョンストン(Sebastian Johnston)教授率いる研究チームは、通常はヒトやチンパンジーにしか感染しない大半の風邪の原因となる「ライノウイルス(Rhinoviruses)」に感染しやすいマウスを遺伝子操作によって作ることに成功した。これは、風邪のほか、ぜんそくや気管支炎など呼吸器官系の症状の新たな治療法の試験がしやすくなり、治療法の発見が早まる可能性を意味する。

ライノウイルスは50年前に発見されたが、マウスへの実験を行わない研究は難しいことが分かっている。1946年に英国でCommon Cold Unitが風邪の治療法を発見するため人体への実験を始めたが、問題解決に至らず1989年に解散した。

風邪の大半は細胞表面にある受容体分子にライノウイルスが付着したのを機に発症する。マウスの受容体分子はヒトのものとは若干異なるため、ライノウイルスは付着することはできない。今回、研究チームはウイルスを受容できるようにマウスの受容体分子をヒトのものに近いように作り替えた。

コメント:

マウスにとっては豪い迷惑なことですが、この技術が一般的に広まれば、治療薬の研究は進むことでしょう。


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Yomiuri Online(2008年1月 9日 付)

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クローンマウス誕生に成功 近大生物理工学部4年森田さん



三谷准教授(左)と安斎講師(右)の指導を受け、実験に取り組む森田さん(海南市の近畿大先端技術総合研究所で) 近畿大先端技術総合研究所(海南市南赤坂)で、同大生物理工学部4年の森田真裕さん(22)が、クローンマウス=写真=の誕生に成功した。ベテラン研究者でも成功率が2%程度といわれるほど難易度が高く、同研究所では「学部生の成功例は聞いたことがない。史上最年少では」と驚いている。

 クローンマウスは、核を取り除いた卵子に別の個体の核を移植してクローン胚を作り、代理母のマウスの子宮に着床させて誕生させる。1997年に第1号が誕生したが、着床段階での失敗が多く、現在も成功率は低い。

 森田さんは2006年9月、クローン技術を研究する三谷匡(たすく)准教授(生殖生理学)の研究室に入った。「基礎の基礎も分からない状態」から毎日、午前7時から午後9時ごろまで研究に打ち込み、知識や技術を習得した。

 核を移植する時期の決定や培養時の温度管理などをすべて独力で行い、昨年6月にクローンマウスの誕生に成功。「最初はだめで当たり前と思っていたので、(誕生した時は)大騒ぎしてしまいました」と振り返る。マウスは「風鈴(すず)」と名付け、同9月には自然交配で出産もした。

 三谷准教授は「奇跡には違いないが、それも確かな技術があったからこそ」と感心。指導した安斎政幸講師も「さらに研究を進めて、着床率改善の糸口を見つけてほしい」と期待する。

 森田さんは今春、製薬会社へ就職することが内定している。クローン研究から一度は離れるが、「今回の成功は自信になった。将来は、ここで学んだ技術を生かしたい」と話している。

コメント:

技術が昔に比べて一般化してきたということは、クローンに対する法的な整備や国民の中での合意形成を急いで行う必要があります。


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Yomiuri Online(2008年1月 8日 付)

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理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)は3月から、京都大学の山中伸弥教授のグループがマウスの皮膚細胞から世界で初めて作製した万能細胞(マウスiPS細胞)を希望する研究者に配布する事業を始める。

iPS細胞を多くの研究者に利用してもらうことで、再生医療などの研究を加速させるのが狙い。

iPS細胞は、さまざまな臓器・組織の細胞に変化する万能細胞の一種。山中教授らは人間でも同様にヒトiPS細胞を作製しているが、受精卵を使わず作製できることから世界的に注目されている。

特許取得の手続きも済んだことから、細胞バンク事業に実績のある同センターは京大から依頼を受けて、希望する国内外の研究者に提供することにした。

今週にもiPS細胞の培養を開始し、3月から提供を始める。費用は約100万個の細胞が入った試験管1本で実費1万2000円。提供を受けた研究者が論文を発表する場合は、京大との共同研究になる。同センターはヒトiPS細胞についても4月以降配布する予定。

コメント:

科学の世界ではこういったことが結構当たり前に行われますよね。


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京都新聞(2008年1月 1日 付)

記事:

2008年は、病気や事故などで傷んだ臓器・組織を修復する「再生医療」の元年となりそうだ。人間の体細胞から、あらゆる細胞や組織になる可能性を秘めた万能細胞「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」の作製に、京都大の山中伸弥教授が世界で初めて成功したからだ。「ノーベル賞級」との賛辞もある中、世界の研究者が実用化へ動きだしている。

「臨床医(整形外科)だったのに、いま基礎研究をしているのは、もっとたくさんの人の役に立ちたいと思ったから。20年間研究を続けてきて、ようやく、そんな細胞に巡り合えた」。昨年11月にiPS細胞の作製成功を発表以来、多忙を極める中でも山中教授はかみしめるように話す。

先に研究が進み、iPS細胞と同じ能力がある「ES細胞(胚(はい)性幹細胞」が再生医療の本命と見られていたが、受精卵から作るため、倫理面に問題があるとして研究に大きな規制を受けていた。そこに登場したのが、人の皮膚細胞から作るiPS細胞だ。京都の研究室から生まれた「夢の細胞」を治療に用いる研究は既に始まっている。

「iPS細胞を使った臨床研究は、安全性の試験と(治療に最適な)患者の選択を並行して行えば、1年以内にも開始できる」。昨年末に京都市内で開かれたシンポジウムで、理化学研究所の高橋政代・網膜再生医療研究チームリーダーは、iPS細胞を使った網膜再生で、黄斑変性など目の難病の治療実現が近づいていることを訴えた。

慶応大の岡野栄之教授は、脊髄(せきずい)を損傷して後ろ脚がまひしたマウスに、マウスのiPS細胞から作った神経前駆細胞を移植して、後ろ脚に加重できるまで回復させたことを明らかにした。「神経系の再生では、iPS細胞を使えばES細胞と同等の治療効果が得られると確信した」という。山中教授から譲り受けたヒトiPS細胞を使った研究も本格化させる。

■米と競争激化

日本と激しい研究競争を繰り広げる米国でも、マサチューセッツ工科大のチームが、マウスからiPS細胞を作り、さらに遺伝子組み換えして戻し、遺伝性の貧血を改善させることに成功した。

米国ではiPS細胞の研究に、10年間でカリフォルニア州政府が3000億円、マサチューセッツ州が1200億円という巨額の投入を決める中、日本も異例の速さで山中教授の支援を決めた。iPS細胞の特許を米国に独占され、日本発の研究成果が自由に活用できない事態が懸念されたからだ。

文部科学省は今後5年間で100億円を研究費に支出する方針で、京大は全国の研究者が集う「iPS細胞研究センター」を年内に着工する。最終的には延べ1万平方メートルの施設規模で、再生医療を実現するための研究拠点として期待は高まる。

山中教授のもとには、日米の製薬会社から共同研究の申し込みが殺到している。iPS細胞から作った組織にどんな成分が効くかを試し、新しい治療薬を開発する研究はすぐにも始まりそうだ。

■法整備が急務

iPS細胞は皮膚などの体細胞に、ウイルスベクターと呼ばれる運搬役を使って特定の遺伝子を導入して作製するが、「そのウイルスベクターや遺伝子が将来、がんを引き起こす可能性もある」と、京都大の中辻憲夫教授(物質-細胞統合システム拠点長)は安全面の問題を指摘する。そこで同拠点では、遺伝子の代わりとなる化学物質を使ってiPS細胞を作製する研究を進める。

iPS細胞の研究と臨床応用に関するルール作りも、これからだ。ES細胞のように受精卵を壊さずに済むが、倫理面の問題はすべて解決されたわけではない。iPS細胞からは精子や卵子、それらを使った受精卵の作製が理論的には可能だ。iPS細胞の作製は比較的容易なため、民間企業も含め研究が野放し状態になる恐れもある。

京都大の位田隆一教授(生命倫理)は「日本は生命倫理をどう扱うかという法的な態勢が遅れている。生殖補助医療に関する法律を定め、iPS細胞から作られる生殖細胞についても取り決めを設けるべきだ」と話す。

コメント:

昨年の大きな話題と言えばこれでしょう。倫理問題は国民的にも議論しなければならない話題ですが、盛り上がらないですね。ただ、日本としての支援がすばやく実現できたことは評価しています


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AFP(2007年12月28日 付)

記事:

今年11月、日米それぞれの研究チームが、ヒトの皮膚から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ることに成功したと発表した。さらに12月には別の研究チームが、鎌状赤血球貧血症を患ったマウスの皮膚から作成したiPS細胞を使った治療に成功したことを明らかにした。これらは科学者たちが長年夢見てきた大発見で、生物学の分野では「ライト兄弟の最初の飛行機」に匹敵するほどの大躍進だという。

幹細胞は体のあらゆる細胞に分化することができるため、病気の治療に大きな可能性を秘めており、損傷を受けたり病気になったりした細胞、組織、臓器の代わりに用いられることが期待されている。これまで行われてきた胚(はい)性幹細胞(ES細胞)研究は胎児に成長する可能性のある胚細胞を使用するため、倫理的問題が指摘されてきた。今回発見された技術では、その点が克服できる。

新たな技術の大きな利点の1つに、作成手順の単純さがある。4つの異なる遺伝子をヒトの皮膚細胞に導入することでiPS細胞が作成できるため、複雑でコストのかかるES細胞の研究と違い、通常の研究所でも作ることが可能だ。ES細胞の入手・利用は非常に難しかったため、この技術が発見されるまでは、病気がどのように進行するかを見るためには、動物か死体から取り出した臓器で研究せざるを得なかった。しかし、皮膚、組織、臓器由来のiPS細胞はシャーレで簡単に作れるため、病気の治療法を研究するプロセスとなる病気細胞の遺伝子構造の解明を容易にした。また、病気の治療に効果的な薬物を特定する化学スクリーニングへの利用も可能となり、人命を救う新薬販売までの期間を大幅に短縮することが期待される。

皮膚由来のiPS細胞の利用は、最終的には特定の患者の遺伝情報を有する幹細胞の作成を可能にし、移植された組織や臓器の拒絶反応をなくすことができるとみられている。これはすでに鎌状赤血球貧血症を患ったマウスでは成功が確認されている。また、実験につかったマウス自身の細胞を使用したことから、拒絶反応を抑制するため危険を伴う免疫抑制剤を使う必要もなかったという。

一方で、幹細胞研究の第一人者たちは、皮膚由来のiPS細胞はまだES細胞の代替にはなっておらず、今後もならないかもしれないと指摘する。ヒトの皮膚からiPS細胞を作ることに成功した研究チームの1つを率いる米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)のジェームス・トマソン(James Thomson)教授は「この新しい研究はまだ始まったばかりで、われわれはこれらの細胞がどのように機能するかほとんどつかんでいない」と語る。「いまはES細胞研究を放棄する時期ではない」と述べ、ES細胞は依然、ほかの研究を評価するための「重要な基準」だと付け加えた。

今後は、皮膚由来のiPS細胞をより安全に作る研究を進めるとともに、iPS細胞が時を経ても劣化しないことを確認する必要がある。

コメント:

今年の一大ニュースでしたね


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